田嶋香里／画家

作品への想い

若き日ころは、人物を描くことが好きでした。
愛らしい少女の何気ない仕草や、大人になろうとする少女のひたむきさを描くことが好きでした。

年月とともに自分自身が成長し、さまざまな経験や悲しみを知ったころ。
人間の奥底にある嫉妬、妬み、おごり…
そういうものにとてつもない嫌悪を感じ、そこから遠ざかろうとする自分がいました。

人間が描けない。

描こうとすると、うわべだけの綺麗な少女になり、人の心を打つ絵が描けない。苦しい日々が続きました。

そんなある日、竹やぶに捨てられていた子猫を拾いました。
「小麦」と名付けた子猫は、甘えん坊かと思うとそっぽを向き怒って散らかしたり、気づいて欲しくて悪さをする…

壁も床もカーテンもボロボロに…
（整理整頓でお仕事ができると言われるほどの、お掃除好きの私なのですが…）
なんてやつだ!!!

だけど不思議と愛おしい…
彼女は私の心を癒し、笑顔にしてくれるのです。

そう、そんな絵を描きたい。

猫の姿を借りて人間社会を描こう。

正義感あふれる子もいる。
努力家の子もいる。
優しい思いやりのある子も…

だけど、ずるい子もいる、意地悪な子もいる。

どんな子も、猫の姿だとクスッと笑える。
そのクスッと笑う瞬間…私の絵を見た人の抱えている悲しみも苦しみもその瞬間だけは忘れられる。

そんな絵を描こう…

明日から、また勇気と希望が持てる。
そんな絵を描こう…

作品の中には擬人化された猫、普通の猫、人間もいる。
うずらやペンギン、小さなパンダ…

「共存」するこの地球でクスッと笑える瞬間を描き続けたい。